バーチャルインフルエンサーのNFT活用:メタヒューマンの未来

目次

1. 限定コンテンツの提供

NFTを活用することで、バーチャルインフルエンサーはファン限定の特別なコンテンツを提供しています。
例えば、バーチャルキャラクター「Dayzee」は、セレブのパリス・ヒルトンとコラボし、本人語りの限定動画NFTシリーズを発売しました。このNFTは1点ものの短編動画で、初回作品は68.88ETH(約20万3千ドル)で落札されました。購入者には、ロサンゼルスでのパリスとのランチやショッピングといった特典も付与され、ファンにとって特別な体験が提供されました。

また、シンガポールのバーチャルインフルエンサー「Rae」は、3点限定のアニメーション動画NFTを販売し、各作品の購入者にはRae本人からの感謝メッセージ動画が贈られる仕組みでした。

このように、NFTを活用することで、ファンは特別な体験を得られ、バーチャルインフルエンサーは熱狂的な支持を獲得することができます。


2. デジタルアート作品のNFT化

バーチャルインフルエンサーのビジュアルや世界観自体が、デジタルアートとしてNFT化されるケースも増えています。

代表例として、バーチャルモデルのLil Miquela(リル・ミケーラ)が挙げられます。彼女は2020年に初のNFTアート「Rebirth of Venus」を発表しました。この作品は、自身を女神ヴィーナスに見立てた幻想的なビジュアルアートで、159.5ETH(約8万2,000ドル)で落札されました。収益は、テック業界の女性支援団体に寄付され、NFTを活用した社会貢献の一例となりました。

その後もMiquelaは1,500点のNFTコレクションを発表し、ファンが「自分だけのMiquela」を所有できる仕組みを展開しました。

また、シンガポールのRaeやバーチャルスーパーモデルShuduも、自身の3DアートをNFT化し、アート作品としてのコレクタブル性を高めています。


3. NFTで形成する独自コミュニティ

NFTは、単なるデジタルアイテムにとどまらず、ファンコミュニティの形成にも活用されています。

日本の人気VTuberキズナアイは、活動5周年を機に無期限休止を発表し、メタバースとNFTを活用したファン交流を打ち出しました。彼女は2021年にNFTプロジェクト「Metaani(メタニー)」とコラボし、11体の3DキャラクターNFTを発売しました。これらのNFTには、過去の動画サムネイルなどの特典が付属し、OpenSeaで取引されています。現在、フロアプライスは約0.6ETH(約40万円)と高額で推移しています。

また、韓国のバーチャルK-popアーティストApokiは、約40,000個のNFTミステリーボックスを完売させました。このNFTの保有者は、今後公開予定の仮想プラットフォーム上でApokiのライブショーを観覧できるといった特典が付与され、ファン限定の特別な体験が得られる仕組みになっています。

このように、NFTはデジタル会員証のような役割を果たし、バーチャルインフルエンサーとファンの関係をより密接にするツールとして機能しています。


4. ブランドコラボレーションと収益化モデル

バーチャルインフルエンサーは、NFTを介してブランドとのコラボレーションを展開し、新たな収益モデルを確立しています。

例えば、キャラクタービジネス企業Superplastic社は、バーチャルインフルエンサーGuggimonとGucci(グッチ)のコラボNFTプロジェクト「SuperGucci」を発表しました。このプロジェクトでは、NFT購入者に対し、イタリア職人が手掛けた8インチ陶器製フィギュアを提供するなど、デジタルとフィジカルを融合させた試みがなされています。

また、Dayzeeとパリス・ヒルトンのプロジェクトでは、有名人のストーリーをバーチャルキャラクターが演じる動画NFTとして販売し、大きな収益を上げました。

さらに、AIロボットラッパーのFN Mekaは、TikTokの公式NFT企画「Top Moments」とコラボし、バイラルヒットした動画クリップを題材にNFTを発売するなど、コンテンツをNFT化して収益を得るモデルが増えています。

NFTは、ブランドタイアップ商品のような位置づけとなり、限定デジタルグッズ販売によるマネタイズ手段として定着しつつあります。


5. 市場動向と今後の展望

  • 主要ブロックチェーン: Ethereum(イーサリアム)が主流だが、手数料削減のためPolygonなどのL2も活用
  • 主要マーケットプレイス: OpenSea、SuperRare、Foundation、Mintable、Raribleなど
  • 今後の展望: メタバースやWeb3の発展により、NFTの価値がさらに高まり、ブランド・アーティストとの連携が進む

NFTの活用は、バーチャルインフルエンサーにとって新たな収益源とファンエンゲージメント手法の確立に貢献しており、今後もさらなる発展が期待されています。


6. 既存の成功事例

Lil Miquelaの成功例

  • 初のNFT「Rebirth of Venus」は159.5ETH(約8万2,000ドル)で落札
  • 1,500点のNFTコレクションを展開し即完売
  • NFTプラットフォーム大手のDapper Labs社に買収され、DAO化構想も進行中

バーチャルインフルエンサーとしてNFT市場に早くから参入したLil Miquela(リル・ミケーラ)は、NFTアートを通じて大きな成功を収めました。
「Rebirth of Venus」という作品では、彼女のキャラクター性とアート性を融合させ、神話的なストーリー性を持たせたことで、NFTコレクターからも注目されました。さらに、収益を社会貢献に充てた点もコミュニティの支持を得た要因の一つです。

Miquelaを運営するBrud社が、NFTプラットフォーム大手のDapper Labs社に買収されたことも特筆すべき出来事です。Dapper LabsはNBA Top Shotを運営し、Flowブロックチェーンを開発する企業であり、MiquelaのDAO化(自律分散型組織化)を推進する構想を発表しました。これにより、バーチャルインフルエンサーが単なるキャラクターではなく、ブロックチェーン技術と融合した新たな存在へと進化する可能性が広がっています。


キズナアイの戦略転換

  • VTuberとしての活動を休止し、NFT/メタバースに軸足を移行
  • MetaaniとのコラボNFTを発表し、限定デジタルアート11点を販売
  • ファンと新たな形でつながる戦略が評価され、高値取引が続く

日本発のVTuberであるキズナアイは、活動5周年を迎えた2022年2月、無期限の活動休止を発表しました。しかし、これは単なる引退ではなく、NFTやメタバースを活用した新たなファン交流の形へと移行する戦略的な決断でした。

彼女は休止直前に、NFTプロジェクト「Metaani」とのコラボNFTを発表し、自身のトレードマークであるハート型ヘッドセットを付けた11体の3DキャラクターNFTを販売しました。これらのNFTには、彼女の過去の動画サムネイルや限定デジタルアイテムが付属し、OpenSeaでの取引価格も上昇を続けています。

キズナアイのNFT戦略は、「ファンがデジタル上でキズナアイの一部を所有できる」という新しい概念を提示し、NFT市場におけるVTuberの可能性を示しました。


新興バーチャルインフルエンサーのNFT活用

Apoki(韓国のバーチャルK-popアーティスト)

  • 約40,000個のNFTミステリーボックスを完売
  • ランダムアイテムによりガチャ要素を取り入れ、ファンの興味を引きつける
  • 仮想ライブの参加権など、所有者限定の特典を付与

韓国のバーチャルアーティストApokiは、K-popさながらの音楽活動と並行してNFT市場にも参入しました。彼女の「Get it Out」ミステリーボックスNFTは約40,000個が発売直後に完売し、大きな話題を呼びました。

このNFTボックスはランダムなアイテムが封入されており、開封するとApokiの3Dアバターやダンスモーションなどが入手できる仕組みになっています。当たりには、Apokiの仮想ライブへの参加権といった特典も含まれ、NFT所有者に「特別な体験」を提供することでファンの熱狂度を高めました。


Rae(シンガポールのバーチャルインフルエンサー)

  • フォロワー1.4万人(当時)ながら初のNFTアートを即完売
  • 販売価格を0.155ETH(数万円)と手頃に設定し、ライト層も参入しやすくした
  • 購入者へのお礼動画プレゼントなど、ファンとの直接的な交流を実施

シンガポールのバーチャルインフルエンサーRaeは、比較的規模の小さいアカウントながら、NFT市場で成功を収めました。彼女の最初のNFTコレクションはわずか1.4万人のフォロワーにもかかわらず即完売し、NFT市場での可能性を示しました。

Raeの成功要因は、価格設定の戦略とファンへの特典提供にあります。NFTの価格を0.155ETH(数万円)と手頃に設定し、新規参入者でも購入しやすい形にしたことが奏功しました。また、NFT購入者に対してRae本人からのお礼動画を提供するなど、ファンとのエンゲージメントを強化する施策も好評を博しました。


7. 市場拡大と今後の展望

バーチャルインフルエンサーとNFTの融合は、メタバースやWeb3トレンドとも相まって今後さらに拡大が予想されます。

  • NFTは単なるデジタルデータではなく、ファンが「推しの物語の一部を所有し共有できる手段」としての価値が高まる
  • 仮想空間上でのライブ出演や限定コミュニティ運営など、NFT活用の幅が広がる
  • ブロックチェーンの相互運用性向上により、NFTを複数のメタバースで活用できる可能性がある
  • ブランドコラボの増加により、NFTの付加価値(所有者だけが得られる体験や権利)がより重要に

すでにGucciのようなラグジュアリーブランドがバーチャルヒューマンとNFTで提携する動きがあり、今後も大手ブランドの参入が相次ぐと考えられます。バーチャルインフルエンサーたちは、NFTを通じて新たな収益源を確保し、ファンとのエンゲージメントを強化する時代に突入しています

NFTを活用することで、「推しキャラの物語の一部を自分のものにできる」喜びがファン心理を刺激し、高いエンゲージメントと収益を生んでいます。これにより、バーチャルインフルエンサーは、次世代のプラットフォームとしてNFTを活用し続けることになるでしょう。


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